CROSS×HEART fortune・crystal・stuggle 

□退魔師
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  ──五年前──

「僕と行く気があるなら、この手を取って」

 僕は目の前にいる少女に、手を差し伸べる。
 少女は一瞬ビクッ! と震える。
 ──当たり前だ。急に拉致されて何時間も走ったあげく、連れて来られたのは研究施設。周りには実験に失敗して死んだであろう子供の骨が散らばっている。
 そんなところにいたかと思うと急な爆発音の連続。しばらく収まったら今まで開かなかった扉から人が出て来て手を向けられれば、相手が自分と同い年程度の子供とは言え、さすがに精神的に辛いところがあるだろう。しかも、その後ろは炎が舞い、黒煙が浮かぶ。
 何処へ連れて行かれるのかも判らない。そんな状況では、僕も敵に見えてしまうだろう。
 安心させればいいんだろうけど、僕もその時はまだ10歳の子供。気の利いた事も言えず、ただ助ける事しか考えられなかった。
 だから僕はただ一言……

「君を、助けに来た」

 その一言で少女の瞳から不安の色は消え、少女は差し伸べられたその手を取った。

「さあ、行こう」

「……っ、うん!」

 その声は僕の耳にはっきりと届いた。
 それが彼女、『鈴』との出逢いだった。














 ──……坊

 懐かしい。

 ──け……

 五年前の事を今更思い出すなんて。

 ──…ー坊

 あまり良い記憶じゃないはずのに。

 ──けー坊

 ああ、うるさいな……この声は─…

 ──けー坊!!




 ……どうやら寝てたらしい。どうりで今まで思い出そうともしなかった事を思い出すはずだ。
 夢は何を見るか判らないからね。
 そして目を覚ますと、そこには僕を起こした張本人が居た。
 場所は……俗に言う取調室だね。

「……阪守さん」

「おっ、起きたかけー坊」

 やっぱり阪守さんか。まあ、僕をけー坊なんて呼ぶのは1人だけだしね。

「……やっぱり貴方ですか。あんな警察が来た時点で判りきった事ですけど」

「あ、バレた?」

「下校中に拉致るように、パトカーへ強制的に乗せるのは貴方ぐらいのもんですよ?」

「まあそうゆうなって。今回は仕事っつうか依頼だよ」

 この人は阪守 考三(サカモリ コウゾウ)さん。行動が無茶苦茶な警視。(二児の父親。37歳)
 僕の失敗は今回もこの人に捕まったのが失敗だ。とゆうか、知り合ったのがそもそもの失敗だと思う。
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