第二本棚

□日々繰り返す
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「お前は馬鹿だな。」


背後の相手に首を捻ると一瞥をのみくれ言葉を投げ付ける。
自分自身、よくもまァ此処まで呆れた声が出るものだと思う。
コイツが居なければ(わざわざ知る必要も無いのだが)この先も知る事は無かっただろう。
それも仕方の無い事で背後の相手は飽きもせずに、


「お前の事を愛している。…と言う俺の言葉が信じられないのか。」


そんな戯言ばかり口にする。
日に何度も…、聞き飽きた。
時折形を変えても結局の所示すのは同じモノ。
僕を特別視しているのだと言う。

さも心外だという顔をしながら言うものだから僕は折れて仕舞い苦笑しながら肩を竦めた。
これも何度繰り返したのか分からない。


「そんな下らない言葉をどう信用しろと?そんな僕はモノ否定し続けてやるよ。」


座っていた椅子をくるりと反転させ向き合い眉を寄せて見せると、目の前の相手は僕とは対照的に口角が上がった。


「ならばお前が否定するよりも一つ多く言葉を紡げば良い。」

「…お前は馬鹿だな。」


ほんの少し前と同じ言葉。
声には何時の間にか穏やかさが戻っていた。
知らずに、僕はまた兄貴に感化されている。











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信じるなんて言ってやるものか。

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