第二本棚

□邪まで、淫らな、
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「その名の通り、誰にでも淫らな翅を広げるのか。」

苛立って居る様にも悲しんで居る様にも聞こえる声で問われる言葉。
脳内で反芻している内に網膜に映る景色が著しく変わった。
真っ白な宮の天井に、顔身体に垂れ下がる金糸。
影になってよく見えない兄の顔。
顔の両横に手を付いたまま、短い溜め息が聞こえた。





「あ…、イ……っ」

聴覚を犯す水音。
訳も分からず首をただ横に振り嫌だ、と繰り返すだけで碌な抵抗が出来ない。
首筋に顔を埋められ急所に立てられる歯の感触に知らずに喉を引き攣らせた。





片手を後頭部に添え、もう片方で腰を掴むと激しく犯す。
縋るものが欲しくて無意識に兄の服を掴んでいた。

「……だ、お前を……、」

耳許に何度も言葉を落とされるものの、それは脳へとは届かず己の喘ぎ声に掻き消される。
辛うじて届いた低く呻く声と共に体内に吐き出される熱に意識が飛びそうになった。





「…よく、好きでも無い奴とこんな事出来るね…獣染みている。」

兄に背を向け引き寄せたシーツを頭まで被り呟いた。
声は酷く枯れていて己のものでは無い様だ。
無駄な返答は聞きたくなくて、身を丸めて縮こまらせた。
膝を胸元に引き寄せるとどろりと吐き出された体液が太腿伝う。
軋む寝台に兄が此方を向いたのを感じて取れた。
背中に視線が刺さる。

「好きでも無い奴に勃つ程、飢えてない。」

返った言葉に寝返りを打ちシーツの隙間から兄を覗くと眉を下げて困った様な表情をしていた。

何時もの兄が、居た。










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「好きだ、お前を俺のモノにしたい。」

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