第二本棚

□猫
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連日の任務、後処理、任務、後処理…の繰り返しの為に中々虚夜宮へと帰還する事が出来ずに居た。
己自身戦闘中に高揚を感じるのは確かだが並外れた戦闘狂いの上司を持った事を後悔するも中途半端な真似は出来ず、結局、一週間程の後に帰還を果たした。

砂埃や血に塗れた(付着している血液の8,9割は敵のだ、と此処は言い張っておく。)衣服を脱ぎ捨て湯を浴びるとそのまま寝台に仰向けに寝転び片腕を引き上げると目元を覆った。
冷たい寝台が疲れた身体に酷く心地良く感じられる。

疲れが一気に重く圧し掛かり起き上がるのも億劫になり食事は後だ、と眠りへと落ちようとしているとよく馴染んだ霊圧を直ぐ近くに感じた。
どうやらあちらも様子を窺って居るようであって、それでも音はたてずにゆっくりと近付いてくるのを霊圧の動きで感じ取った。

寝台がぎしりという音と同時に沈んだと思うと腰に辺りに、重み。
目元を覆っていた腕を少しずらし瞳を開け見ると、ザエルアポロが腰に跨り冷えた細い指先で肌蹴た胸元を軽く引っ掻いていた。


「……。」


腕を目元から退かしザエルアポロの頬へと伸ばすも触れる寸前でかわされ、首筋に顔を近付け、鼻先を擦り寄せてきた。
そのままザエルアポロは首を伸ばし髪を食みながら耳許に唇を寄せるとにゃあ、と一度だけ鳴いた。


「猫の真似。」


次いで端的に告げられた言葉に思わず苦笑を漏らした。
空を彷徨った手を戻し桃色の後頭部を撫でてやると鎖骨上部、皮膚の薄い部分に歯を立てられる。
痛みに片目を細めるも好きなようにさせて居るとそこに唇を押し当て吸い上げるとうっとりとした吐息と共に鬱血痕を小さく残された。


「…寂しかったのか?」


ぽつり、と問い掛けた言葉にザエルアポロは鬱血痕を舌先で擽るように舐めていた仕草を止めると状態を起こし無表情に見下ろしてきた。
後頭部から離れた手を己より低い体温を求めるように頬へと再び伸ばすと今度は避ける事はせずに顔をそちら側に傾けてきた。


「お前は…、」


寂しかったのか、と再度問おうとする唇に思い切り噛み付かれた。










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淋しがり屋な弟。

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