第二本棚

□嫌いキライきらい
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「嫌いだね、そんなモノ。オカシイんじゃないのか?」

「全く、オカシイとは酷い言われようだな、俺は。」


イールフォルトの用意した朝食(と、言っても既に時間的には昼食に近いのだが)をさも不味そうに顔を顰めながら口へと運び咀嚼し終えるとザエルアポロはそう言った。

以前そんな顔をするなとイールフォルトが指摘するとわざわざこうやって食事を摂っているだけマシだ、と言われた。
それきり日に一食とはいえ、まともな食事を摂るようになっただけマシ、とイールフォルトは考えるようにした。
確かに食事も睡眠も疎かにして倒れるようなザエルアポロにとっては進歩だった。


「何時もお前の選ぶモノはオカシイんだ。ズレている。お前の主のグリムジョーの奴だって…、」


発する「主」の単語に明らかな嫌悪が含まれている事を容易に聞いて知る事が出来る。
聞き飽きる程に耳にした単語が次いで並ぶ事も、容易に。


「「粗野で、戦闘狂い、本能の塊のような奴、…」」


ザエルアポロの声に合わせ同じ調子で単語を並べてやり、口許に薄く笑みを浮かべながら続きは?と促すと一層顔を不快そうに顰めた。
ガチャンと口へと食べ物を運んでいたフォークを皿へと乱暴な音をたて投げ込む。


「嫌いだ。お前が好きなモノは全て。カスだなカス。」


口調に嘲笑をたっぷりと混ぜながら皿をテーブルの中央に向け滑らすとイールフォルトの皿に音をたててぶつかり、止まった。


「俺の好きなものに対してそんな言いようでは、可哀相だろう?」


席を立ち上がり早々に自分を不快にしかさせないその場を後にしようとするザエルアポロの背に言葉を投げ掛けるとひくりと肩を揺らし、イールフォルトをゆっくりと振り返り見た。


「誰が。何が。」


先程までの不快そうな表情すら消え去り単語での機械的な反応。
テーブルに肘を付き掌に顎を乗せるとイールフォルトはそんなザエルアポロとは対象的に楽しげな笑みを浮かべた。


「お前が。」

「…ハ?」


短く告げた言葉に理解出来ないと言った様にザエルアポロは軽く目を見開くと小さく声を上げる。
その様子にくつくつ肩を小刻みに上下に揺らし、噛み殺した笑い声をイールフォルトは上げ、端的だった言葉を補うように続けた。


「俺はお前が誰より、何より、好きなんだ。」

「……っ、勝手に言ってろ、カス。僕には何も聞こえない。」


言いながらザエルアポロはナプキンをイールフォルトの顔面を目掛けて投げ付けてきた。










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俺が好きなお前の事をもお前自身は嫌うのか?

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