第一本棚

□茶番劇は如何?
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殆ど毎日という程に僕の宮の僕の部屋へと押し掛けてきていた兄が昨日、今日と姿を現さない。

一日とても静かで良い。なのに何処か寂しさを感じてしまっている僕が居る。

あまりにも癪だけどもまぁ、たまには良いだろう、と僕から兄の住まう6の宮に赴く事にしてやった。
毎日顔を合わすのが日課みたいになっているからそれを果たす為。それだけ。



「兄さん。僕、ザエルアポロ」

一応兄とは違い礼儀を弁えている僕は、ずかずかと私室に入り込んだりはせずに、相手の承諾を得ようと声を掛けた。
あぁ、とわざわざ僕から来てやったというのにあまりにも親切心を欠いた返事が聞こえた。
部屋の中の兄の霊圧が動かない事から扉を開けてくれるつもりは無いらしい。
むっとするも僕は自分から扉を開けて部屋へと入った。

珍しく机に向かっている兄。
一度僕をちらりと僕を見るもすぐに机に視線を戻す。

全く持って失礼な奴だ。


「折角僕から来てあげたんだから歓迎したらどうなんだよ?」
「悪いな。今、グリムジョーの代わりに藍染様へと提出する報告書を書いているんだ。アイツ、第6十刃命令だとか言って面倒な事は俺に押し付けてくる…ったく」

ぶつぶつと文句を言いながらも兄はペンを持った指先を動かしている。
何件分も溜まっているらしい。
机の上には兄の綺麗な字の並んだ紙が積まれていた。


「お前から自分の事は自分で遣れとグリムジョーに言ってくれないか?命令だとあまり強く言えないのを逆手に取りやがって、アイツは」

二回目。
僕の事は見もせず、名前も呼びもしないくせにあんな、野蛮で低脳なグリムジョーの名前は二回も口にした。
本当に下らない事だけど、これは、嫉妬。


「お前なんかグリムジョーに忙殺されてしまえ」


一言を残すと僕はくるりと踵を返し、兄の私室の扉を静かに閉めた。

一体何なんだ。わざわざ僕が自ら会いに来てやったというのに。

呟きながら歩いていると、ふと、良い案が浮び自分の宮へと向けていた足を違う方へと向けた。

僕にだって考えがあるんだ。
後悔しても知らないからな。









漸く報告書を完成させる事が出来た。
弟と愛を育みたい俺としては大事な貴重な1日半という時間を無駄に使ってしまった。
しかも弟を大層不機嫌にさせてしまった。
全てグリムジョーの所為だ。

そんな事を考えながら俺は弟の住まう8の宮に向かっていた。
何と弁解しようか。
口調こそ何時ものそれとは変わらなかった、が、部屋を出る時のあいつの霊圧は肺を潰されるかと思う程の圧力だった。
相当怒っているのは分かっている。

俺は響転を使うまではいかないものの早足になっていた。
弟の私室の前で足を止める。中から何やら話し声が聞こえる。
弟は人と接するのをあまり好まず、私室に人を入れる事等しない、筈。

一体誰だ?とストーカー染みているが扉へと耳を当てた。


「アーロニーロっ、擽ったい、止めろと言っているじゃないか」


拒否を示す言葉、弟の声。
俺の中でプツっという音が聞こえた。


壊れてしまうんじゃないかという程の力で扉を開けると、そこには9の数字を持つ以前喰らったという死神の姿を模している十刃のアーロニーロの後ろ姿と弟。
左手から見える奇妙に蠢く触手が弟の肌に絡み付くのがアーロニーロの肩越しに見えた。


凄まじい不快感。
抑え様の無い嫉妬心。
何もかもが混ざった気持ちで引き離すと殴っていた。
アーロニーロを。


こうなっては十刃だの、ただの数字持ちだのと言っていられない。
アーロニーロは殴られた頬を押さえながら痛いだろとか何とか文句を言っていたがそんなものは聞いていられず力任せに弟の部屋から放り出した。



「……、兄さんには、僕がどうなろうと関係無いだろう?」
「関係無い、わけがあるか。俺はお前と会う時間を削がれるのが嫌でさっさと報告書を上げてきたんだ。其れが良くなかった…そんなもの放ってお前と一緒に居れば…アーロニーロなんかに襲われる事には…ッ」

俺はそう言いながら立ち尽くしている弟に詰め寄り、何かされてはいないだろうかと上から下まで見た。
服は乱されてはいない、何かしらの痕も残っていない。
アーロニーロの触手が触れていた箇所を拭う様に指先で触れる。
弟は擽ったそうに声を上げた。


「大丈夫だよ。アーロニーロには何もされていない。兄さんが来てくれて本当に良かった」

恐怖から解放され安心しての行為だろうか、心底嬉しそうに言うと抱きついてきた。

弟が言うならそうなのだろう、と思うがやはり心配で、それに沸き起こった嫉妬心やらは拭えず首筋に顔を埋めると了承も無しに所有印を残した。


「ア、ハ。見えるとことに残してよ、兄さん」

まるで甘える声に俺は目を細めると服から露出している首筋にもう一つ、二つと印を残した。
白い肌に映える朱。











「悪かったね。茶番に付き合わせちゃって。痛かったろ?」
「ああ。コレ位大丈夫だ。それより何だかんだ言ってお前、ちゃんとイールフォルトに愛されてるじゃないか」
「再確認出来て良かったよ。お礼と言っちゃなんだけど、好きなだけ従属官連れ帰って食べてもらって構わないよ」









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イルザエ←アロ的なあれそれこれ。(どれ
イルザエにアーロニーロを乱入させたい私の願い(第一段階)は叶いました。

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