第一本棚
□イヤよイヤよも
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「男はね、優しいだけじゃ駄目なのよ!?それが分からないなんて何時恋人に愛想付かされる事か!」
回廊で出逢い頭に腕組みをしたチルッチ・サンダーウィッチに足を引っ掛けられ体勢を立て直しているところ、イールフォルトは怒鳴られた。
一体何の事かさっぱりと分からないイールフォルトはその剣幕に理不尽だと思いながらも取り敢えずはすまん、と謝るしかなかった。
そのままチルッチに引き摺られるように3ケタの巣に連れてこられ、事も在ろうか正座を強制させられた。
「…一つ、聞いても良いだろうか?」
「喋るな。このアタシの話を聞きなさい!」
「……」
明らかな怒気を孕ませているチルッチの様子を伺うように声量落としイールフォルトは発言権を求めるべく問い掛けるも、敢え無く撃沈した。
「僕の話を聞いてくれよ。普通、…仮にも恋人同士だよ?性交中に一言でもイヤだ、とか痛い、何て言ったら止めて仕舞うものい?」
「あたしは虐めちゃう方だから分かんないけどぉ、流石にそれを言われただけで止めちゃうなんて甲斐性が無いわねぇ。あんたのお兄さんは」
テーブルの上に広げられた色取り取りの菓子には手を出さず紅茶の入ったカップを持ちながらはぁ、と盛大に溜め息を吐いてザエルアポロは言った。
チルッチは皿の上に並べられているクッキーに手を伸ばし一つ摘み上げ口へと運びながら苦笑を混ぜて答える。
「優しいのは良いんだよ。でもね、普通言って仕舞うものだろう?僕にだって羞恥心だってある訳だしね。それなのにその一言を口にしたら最後、すまん、って言って部屋を出て行くんだよ?僕は中途半端な状態で、放置プレイも良いところだよ。その後虚く、」
「男で放置プレイは辛いわよね。しかも、折角恋人が居るのにその後一人で自慰なんて」
途中で切り上げられた言葉を補うようにチルッチが続けてやるとこくこくとザエルアポロは頷いてみせ、テーブルを両手でばんと叩いた。
「そうなんだよ!見られているなら興奮だってするだろうに!……、だからこんなのまで作っちゃった。ちゃんとイールフォルトの形をした、さ」
言いながらザエルアポロは何処からか男性器を模した玩具を取り出し愛しげに頬摺りして見せるとテーブルにそれを置いた。
チルッチはそれを手に取るとスイッチを押し上げ振動し始めるそれにきゃはきゃはと笑い声を上げた。
「イールフォルトのって結構、ねェ?あたし誘っちゃおうかしら」
「ちょ…っ、いくらチルッチでもイールフォルトを誘惑したら許さないよ!?」
「きゃは、冗談よ。流石にあんたと同じような顔した男に抱かれたく無いわね」
「…それなら良いけど。イールフォルトの衣服に黒髪が付いて居たら真っ先に君を疑って仕舞うからね!」
「分かる?イヤ、って言うのはもっとって意味なのよ?その気持ち察してやりなさいよ!というか、私でもそれ位分かるわよ?他人のあたしが理解出来るのに、兄で恋人のあんたが分からないなんて…」
「……っ、感謝するチルッチ!すまんザエルアポロ…!!」
チルッチから話を聞かされたイールフォルトは正座の状態からばっと立ち上がると響転の勢いでザエルアポロの住まう8の宮へと向かった。
「チルッチ聞いてくれよ。昨日のイールフォルトったら、アハ…昼間っからだよ?僕が止めてって、痛いって言っているのにちぃっとも離してくれなくて、何度も求めてくれたんだァ…もう僕、幸せで幸せで…」
うっとりとした表情で顔を赤らめながら何も知らないザエルアポロがチルッチに昨夜の愛の営みを報告する。
チルッチは心底幸せそうなザエルアポロの顔を見ながら紅茶の入ったカップに口を付けた。
「良かったじゃない。あんたの気持ちに気付いてくれたんじゃないの?」
「あン、思い出したら身体が疼いてきちゃった。6の宮に行ってくるよ。…そこら辺適当に放っておいて良いからね。残りはルミーナやベローナに任せちゃって?…僕の愛しい愛しいイールフォルト、待っててぇ」
椅子から立ち上がると幸せそうに笑みを浮かべながらくるりと振り向くとテーブルの上の菓子と紅茶を指差すとスキップするような足取りでザエルアポロは部屋を後にした。
まったく、チルッチちゃんったら本当に優しいんだから。
……、ホント誰かイイ男紹介してくれないかしらぁ。
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Pink SpiderのMaMoさんと相互リンク記念小説。
「イルザエ+チルッチ」(のつもり)
救いようの無い下ネタな上にイールフォルトの出番がほぼ無いという失態を犯しました。
リクエストに何とか答えられていれば幸いです。
MaMo様のみお持ち帰り可で御座います。
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