ノベル

□02.
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■第2話■



「お姉ちゃん!ご飯作って置いたからね!いってきまーす!」

シャーリィの声でハッと目を覚ましたアスカ。玄関でバタバタと靴を履く音がする。
アスカはむくりと起き上がり、寝ぼけたまま頭をわしわしと掻く。

「…いってらっさい…」
「うん!じゃあね、お姉ちゃん!いってきます!」

元気なシャーリィの声が聞こえると、ドアがバタンと閉められて鍵もガチャリと掛けられた。アスカの部屋にまた静寂が訪れると、アスカはふあ、と大きなあくびをして部屋の中を見回した。

「(まだ痛いな…)」

頭がズキズキと痛む。脈打つような頭痛はまだ目を使いすぎたことを示していた。
アスカはズキズキと痛む頭を押さえながら布団から起き上がり、寝室の隣りの居間に行く。そしてリモコンで隅にある小さなテレビの電源を入れる。いつもの朝の報道番組をやっている。

「…クイン社令嬢誘拐事件についての一部詳細が判明いたしました。犯人は“ハコブネ”の一味と見られ、XIAの意向によると…」
「(耳はちゃんと聞こえるな…)」

アスカは小さなテーブルの前に座った。頭はまだドクンドクンと痛んでボーッとしていて、それにやっぱりまだ眠い。
テーブルの上にいつものようにシャーリィが朝ご飯を作って置いていた。アスカはすぐにまだ湯気のある朝ご飯を食べ終わりると寝室に戻った。カレンダーの今日の日付のところには、“護衛/17:00”と書かれていた。アスカが次に時計を見ると、針は8:10を指していた。

「(…もう少し寝たら治るか)」

アスカはまた大きなあくびをして布団に潜り込んだ。寝転ぶ前に枕元にあったペットボトルの水で錠剤の薬を1錠飲む。
それからまた寝付くまで、ほとんど時間は掛からなかった。

アスカは1度だけXIA(シア)を見ている。見たと言うよりは、“遭遇した”。アスカが五感を操ることが出来るようになったのはそれからだった。
見たくないものは視力を一時的に落として見ないことが出来るし、逆に見たいものは視力を一時的に上げて見ることが出来る。
嗅ぎたければ良く臭う、嗅ぎたくなければ臭わない。聞きたいなら良く聞こえる、聞きたくないなら全く聞こえない。味わいたければ味が良く分かる、味わいたくないなら、味がしない。触られたいなら触られた感覚が良く分かる、触られたくないならまるで宙に浮いているかのように全く感覚が無くなる。
そのかわり五感を操れば操るほど反動が頭痛として現れ、その度アスカを苦しめる。

「…」

しばらくしてアスカが再び目を覚ますと、陽は微かに西に傾いていた。時計を見ると、3時ちょっと前だった。少し寝るつもりが、約5時間も寝ていた。
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