ノベル

□04.
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船の汽笛響く港。人もいない、空も薄暗い今は午前4時。
微かに昇る紅い朝日が海の水面に反射して美しい。



■第4話■



「…この子供かしら?」

シンシアが聞いてみると、ハコブネの下っ端はコクリとうなずく。
その脇を見れば年端も行かない子供。真っ黒い髪、瞳は緑。まだ“普通の”小学生のようだ。真っ直ぐにシンシアを見つめる瞳はとても澄んでいた。

「…どうしてXIAがこんな子供に目をつけたのかしら?」

シンシアはポソリと独り言を呟いた。

「…あぁ、それはそいつが“超能力”とか言うものを持ってるかららしいっすよ」
「超能力…?」

聞き慣れない言葉にシンシアはもう1度少年を見た。
超能力だなんて非科学的なものに、科学の塊である人工知能XIAが興味を持つなんて、とシンシアは笑ってしまう。それともXIAが科学の塊だからこそ非科学的なものを解明したいだけなのか、どちらにしろ変な組み合わせだ。

「って、超能力って…何が出来るのかしら?スプーンでも曲げられるの?」
「あぁ…そいつは物をどこかにやったり出来るらしいっすよ。いわゆる瞬間移動(テレポーテーション)っすね」
「…テレポーテーション?」

シンシアは少年を見て、また笑ってしまった。バカバカしいというか、どこかの空想漫画でありそうな話題に、ハコブネやXIAがここまで騒いでいるなんて。

「ふふ、まぁいいわ。もうすぐ父さんも来ると思うし、それまでちょっとここで待たせてもらおうかしら」



「…ここか」

そして同じ頃、アスカも港に来ていた。理由はただ1つだった。
<両親を殺したブラウニーを殺すこと>
夜のうちに健から貰った資料にはここでハコブネ関係で何かの取り引きが行われているらしい、ということが書かれていた。

「…でも、ここで何の取り引きが行われてるんだ?」

辺りを見回しても、それらしい人影は見つからない。アスカが意識を集中させて耳を澄ましてみると、微かだけど人間の話し声が聞こえた。

《…ブラウニーハ、マダ来ナイノカ?》
《分カラナイワ。ケド今コンテナノ方デ、責任者ト話ヲシテイルミタイヨ》
《ソウカ…》

「コンテナ、か…」

ブラウニーはどうやらコンテナで責任者と話をしているらしい。
アスカが辺りを見回してみると、ちょっと向こうにコンテナらしきものが詰まれた部分が見えた。そこに両親の仇がいるとなると、胸に何か熱いものが込み上げて来る。

「くく…」

自然と頬が緩む。
アスカは半ば無意識にそのコンテナ群に向かって駆け出す。コンクリートで固められた道はしだいに砂利道へと変わって行く。

「…」
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