小噺
□嫌いだよ
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やめてよ・・・あなたの瞳は・・・・
―嫌いだよ―
「なぁ、見たか?十番隊の新隊長」
その日、朝からうちの隊舎は、新しくお隣の隊長になったという人物の話で持ち切りだった。確かに隊長が変わるなんてことはあまりないし、話題になるのも分かるんだけど・・・いくらなんでも騒ぎすぎでしょ。
僕はうちの隊長と一角にしか興味ないし、迷惑もいいとこだ。
「弓親さんはもう見ましたか?新十番隊長」
「・・・いや、まだだよ。君たちは見たの?」
「ええ、さっき覗いて来ましたよ!噂通り、随分と小せぇ隊長さんでしたよ!」
小さい?・・・ああ、そう言えば最年少だとか言ってたっけ。今まで一番隊にいたらしいけど、詳しいことはあまり知られていないらしい。そんな奴がいきなり隊長だなんて・・・十番隊もツイてないな。
「それに、隊長になれる程強そうには見えなかったっすよ」
強そうに見えない?なら尚更興味が持てないな。だってそうでしょ?弱い奴なんて美しくない。僕が好きなのは、強いモノと美しいもの。それ以外は、僕の中では存在しないのと同じだよ。
僕がさして興味を持っていないことに気が付いたのか、隊員たちは「あ、掃除に行かないと!」なんてわざとらしく話を逸らしてみせた。
やっと興味のない煩わしい会話から開放される・・・そう思ったのも束の間、後ろから空気の読めない男が一人。隊舎中に響くような大きな声をあげた。
「おい、弓親!十番隊の新隊長が稽古つけてくれるってよっ!!」
・・・・は?何言ってんの、コイツは。訳わかんない上に、いきなり過ぎでしょ?もう十番隊の話なんてどうでもいいのに。振り向いて声の主を不機嫌気味に見遣った。
「・・・何?一角、急に」
「今よ、隣の新入りさんに挨拶がてら勝負挑んでみたんだよ。そしたら“仕事が終わってからなら構わねぇ”って言われてよ♪お前も行くだろ?」
・・・・馬鹿。本当に馬鹿。こっちは今その新隊長さんの話に嫌気が差してたとこなんだよ。一角の空気の読めなさに溜め息を吐かずに居られない。
「あん?何だぁ、その顔。嫌なのかよ?噂の新隊長の力量を試せる折角の機会だぜ?」
「・・・新隊長って言ったって、僕らには関係ないじゃない」
「まぁ確かにそうだが、俺はあの人が護廷隊に入った時から戦ってみたかったんだよ」
何せ“天才児”って騒がれてたからな、と嬉しそうに言う一角。もうこうなったら手が付けられない。もう一度溜め息を吐き、渋々その提案を了解した。