小噺
□不治の病
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この症状は・・・・?
―不治の病―
「あ、冬獅郎!」
一番隊に業務報告へ向かおうとした日番谷は、隊舎を出てすぐに、よく知った馴染みの声に呼び止められた。もはや日常化したその呼びかけに、ふぅ、と溜め息を吐きゆっくりと振り返ると、そこにはにこにこと人好きのする笑顔を浮かべる男が立っていた。
『・・・またお前か、浮竹』
何の用だよ、とあからさまに訝しげに言う日番谷の態度をものともせず、尚嬉しそうな笑顔の浮竹。
「どこか行くのかい?」
『ああ、ちょっと一番隊にな』
「へぇ、それは奇遇だな!」
『あ?お前も一番隊に行くのか?』
「いいや、俺は冬獅郎に逢いに来たんだ」
『・・・じゃあ別に奇遇でもなんでもねぇじゃねぇか・・・』
何言ってんだお前、と言わんばかりに日番谷は彼よりも大分大きな同僚を呆れたように見遣る。だが、視線を向けられた当人はお構いなしに話を続ける。
「冬獅郎にお菓子を持ってきたんだよ♪」
『流すなよ!つーか、いらねぇし』
「硬いこと言わずに!今日のはちょっと凄いんだぞ〜?」
だからいらねぇよ、と怒鳴ろうとしたが、にこにこと何故だか幸せそうに菓子を差し出す浮竹に絆され、ふぅ、と息を吐いて渋々受け取る。
『お前も懲りねぇな・・・・』
「ふふ、冬獅郎にお菓子をあげるのは俺の生きがいだからな!」
『生きがいってな・・・つーか何で俺なんだよ?』
「え・・・?」
草鹿とか他に喜びそうな奴いるだろ、と呟く日番谷。それは何気ない、むしろ当然と言うべき問いかけだった。
しかし、浮竹にとってそれは、回答困難な、至極頭を悩ませる問いかけであった。
(何で・・・?そう言えば、どうして冬獅郎なんだ・・・?あ、同じ“シロちゃん”だから・・・いや、それ以上に何かこう・・・)