小噺

□予想される未来
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それはきっと、そう遠くない未来の話・・・






―予想される未来―









「ちょっとそこどいて〜!」


大きめの、少し苦しそうな声が廊下に響く。声を掛けられた隊士は少し驚いて振り向き、そして声の主を捉え、さらに驚いたように声を出した。


「え?!松本三席?!どうしたんですか、それ・・・」


振り向いた隊士が目にしたもの・・・それは山のようなと形容するのが相応しい、大量の書類を抱え、よろよろと歩く十番隊三席の姿だった。


「ちょっと一番隊に提出しなきゃなんないのよ」

「そ、そんなに・・・ですか?」

「・・・私の所為じゃないわよ?」

「いえ、別にそのようなつもりでは・・・あの、お手伝いしますよ」

「あ〜ありがと」


でも大丈夫、他の隊の子に頼むのは悪いし、と答えやはりよろよろと歩き始めた。




前が良く見えないのと書類が重いのとで覚束ない足取りだったが、次の角を曲がれば漸く一番隊に辿り着く・・・というところで書類が舞い上がった。何かにぶつかりバランスを崩し転んでしまったのだ。


「いたた〜!」

『いってぇ・・・』


バサバサと書類が落ちる音と共に、2つの声が同時に響く。

一瞬、何が起こったのか分らなかった乱菊だったが、その声ではっと我に返り、目の前の自分がぶつかったであろう人物に声を掛けた。


「あぁ、ごめんね!大丈夫だった?」

『いえ・・・俺も余所見してたんで・・・』


その声に乱菊はどこかで聴いたことがあると感じた。そして上げられた顔を見て感じる既視感。整った顔立ち、そしてその中で一際存在感を放つ綺麗な翡翠の瞳・・・・


「あれ、坊やもしかして、あの時の・・・?!」

『え・・・?あ、あんた・・・』

「やっぱりっ!」


久し振りね、と言おうとして言葉を留めた。何か違和感を感じたのだ。

何だろう・・・と呆っと目の前で書類を拾い集める少年を見つめ・・・答えに辿りついた。


「・・・あぁっ!!」

『ぅおっ?!』


発せられた乱菊の大きな声に少年は集めた書類の半分を落としてしまった。


『・・・何すか、急に』


不機嫌そうに向けられた瞳をものともせず、乱菊は少年に詰め寄った。


「あんた、何でここに居るの?」

『・・・はぁ?』


突然向けられた質問に、少年の眉間に深い皺が寄せられた。


『・・・あんたが死神になれっつったんだろ・・・』


ぼそっと呟かれるのはもっともな不満。だが乱菊の言葉の意味はそうではなくて。


「違うわよ!そうじゃなくて・・・あんた、真央霊術院は?!」

『・・・はぁ?』


そんなん卒業したに決まってんだろ、という様子は呆けてんのかよとでも言いたそう。


「じゃなくてっ!だって・・・まだ一年も経ってないわよ?」


そう、乱菊の感じた違和感はこれだった。自分がこの少年に「死神になれ」と言ってからまだ一年も経っていない。それなのに、何故この少年はここに居るのか・・・


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