小噺

出会い
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ああ、こらあかん・・・降参や・・・。







―出会い〜市丸編〜








一年足らずでの真央霊術院の卒業、卒業後すぐの一番隊への入隊、入隊と同時の五席への任命・・・

多くの異例を引っさげた小さな少年との出会いはやっぱり異例やった。


勿論、噂はたくさん飛び交っとったし、興味はあったから、すぐに様子を探りに行った。

そして見つけた姿はボクを驚かせた。

どう贔屓目に見ても、まだほんの子供。せやけどその様子はとても堂々としとって、まるで一番の大御所みたいやった。放つオーラは誰よりも目立っとって、エリート揃いの一番隊の隊士らが霞んでまうよう。

そして可愛らしい顔に似つかわしくない、深く刻まれた眉間の皺が近寄り難い印象を与えるはずやのに、不思議と彼の周りには常に人が居って、みんな一様に恥ずかしげに笑顔を浮かべとった。

その様子を見て、急に胸が締め付けられたような気がした。この子は不思議な力を持っとる。ボクにはない、人を惹き付ける力を。


仏頂面やのに、人を笑顔にさせるこの子。常に笑顔を浮かべとるけど、人を寄せ付けないボク。


あまりにも違いすぎて。ちりり、と胸が痛んだ。

・・・日番谷冬獅郎を、嫌いやと思った。




あの子は近づいたらあかん子や、もし近づいてもうたら色々と面倒なことになる・・・そう思うたはずやのに、自分でもよう分からんけど無性に気になって。

気付いたら無意識にあの子を探しとる自分が、見つけると、つい目で追ってまう自分が居った。

せやけど別に話し掛ける訳やない。近づかんと、離れた所から見とるだけ。



あの日もそうやった。
いつものように仕事をサボりながら、屋根の上から書類を運んどるあの子を見とった。
ボクやったら見ただけで嫌になる程の大量の書類を抱えてはった。

(あない小さい身体のどこにそんな力があるんやろ?)

そんなことを考えながら、見とったら、

(・・・あ、)

あの子の姿が見えなくなった。原因は、あの子の前に立ちふさがった、どっかの隊の隊士らの所為。

(お話ししとる、なんて和やかな雰囲気やないな)

どうも絡まれてもうたらしい。ただでさえ目立つ子や。そんな子がいきなり席官になんてなったら、そら気に喰わへん奴も居るんやろ。

(どないするんやろか?)

悠長に傍観を決め込むつもりやった。自分の倍近くある奴ら数人に囲まれて、あの子がどないな対応するんかも、興味があったし。

やけど。
あの子が突き飛ばされた瞬間、書類が宙を舞った瞬間、自分でも驚くほど素早く、あの子の元に駆け寄ってしまっとった。そして気付いたら突き飛ばした奴の腕を掴んどった。


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