小噺
□不治の病
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何故だろう、しっくりくる答えが見つからず考え込む浮竹。そんな様子を不審に思ったのか、日番谷は目の前で俯く男に声をかけた。
『おい、どうした?』
「あ、いや・・・・」
その声でふっと意識を上昇させた浮竹だったが、またしても声を失ってしまった。視線を戻した先にあった顔。その秀麗さに息を呑まずにはいられない。
(・・・やっぱりいつ見ても綺麗な顔立ちだな・・・)
そんなことを考えていると、いつの間にか不審から心配に色を変えた美しい顔が近づいて来・・・浮竹の顔を覗き込んできた。
『おい・・・・』
「う、うわぁ!!」
不意な接近に眩暈を覚え、思わず声が出てしまった。しまったと思い少年を見遣ると、案の定驚いた様子で目を少し見開いてこちらを見ていた。
「あ・・・す、すまん、冬獅郎・・・」
『いや・・・別に構わねぇけど・・・・お前、顔真っ赤だぞ?』
「え?」
そう言われ、ぱっと自分の顔に触れてみると、確かに熱を持ったように熱い。それは、体調わりぃんじゃねぇか?という日番谷の問いに大丈夫だ、といくら言っても全く信憑性が無いほどで。
慌てて、ちょっと暑いだけだと手でパタパタと扇いでみても、強がりにしか見えない。そんな子供のような仕草をする浮竹に日番谷は苦笑を漏らす。
『いくらまだ9月だっつっても、夕方は冷える。隊舎に戻って大人しくしてろ』
あんま心配させんな、と腕を軽く叩かれ、浮竹は自分の体温がさらに上昇していくのを感じ、もはや一番隊へと去って行く日番谷を無言で送ることしか叶わなかった。
(か、顔が・・・叩かれた腕が熱い・・・何でだ・・・・?)
日番谷を見送った後も、まるで金縛りにあったかのように動けなくなってしまった浮竹が、漸く自由を取り戻したのは、自らの力によってではなく、後ろから何者かに肩を叩かれたからであった。
「浮竹隊長?どうされました?」
「え・・・あ、卯ノ花隊長・・・」
振り向くとそこには怪訝な顔の卯ノ花が立っていた。その表情は浮竹の顔を見るなり、瞬く間に心配の色を濃くしていく。
「どうされたのです?顔色が宜しくありませんね」
お熱でも?と言う様子はもはや同僚というよりも主治医に近い。
違うんです、と言おうにも体調を心配される要素が揃いすぎている上に、自分でも顔や腕の熱さの原因が分からない。
「体調は悪いわけじゃ・・・いや、悪いのかな・・・?」
「はい?」
流石の卯ノ花も、歯切れの悪いその答えに、思わず首を傾げてしまう。その様子に申し訳なさそうに浮竹が付け足す。
「すみません、自分でもよく分からないんです。でもいつもみたいなダルさもないし・・・」
「そうですか・・・では、症状を教えて頂けますか?」
浮竹は正直に今の症状を話した。症状を聞くだけでは、それは確かにいつものものと同じだが、いつもとは違う、と言う浮竹に卯ノ花はさらに頭を悩ませた。
しかし、症状がでる前の状況を聴いた時、卯ノ花の表情から困惑の色が消え去り、柔らかな笑みだけが残った。