小噺

□優しいキスをして
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「た、たいちょー?」

『あ?』

「今の・・・ナンデスカ・・・?」

『は?わかんねぇの?』


嘘つくなよ分かんだろ、とシラっという日番谷に乱菊は自分の顔が熱を持っていくのを感じた。


「え?!な、何でですか?!」

『・・・はぁ?』

「キ、キス、ですよ?」

『あぁ』


そうだな、というそっけない感じの日番谷の言葉に、乱菊の混乱は益々酷くなっていく。


(嬉しい、どうしようもなく。でも手放しに喜ぶことなんて出来ない。だって・・・)


「・・・隊長には、恋人が居るのに・・・」

『・・・・はぁ?』


今度は日番谷の方が混乱しているようだった。


『何の話だよ?』

「何のって・・・昨日・・・女の人と抱き合ってたじゃないですか・・・・」


ああ、また思い出されるあの光景。再び流れそうになる涙を堪えるように下を向く。

しかし聴こえてきた答えは乱菊の想像とは違った。


『・・・あぁ、あれか・・・・』

「あぁ、あれか?!隊長ってそんなタラシだったんですか?!」

『タラシじゃねぇっ!!』

「だって・・・」

『ありゃ姉貴だ』

「・・・・はい?」

『いや、血の繋がりはねぇけどな』


日番谷の話では、相手の女性は流魂街の時に姉のように日番谷と雛森を可愛がってくれた人で、昨日は結婚の報告に来たのだという。抱きついてきたのも久しぶりに会った嬉しさと、結婚の喜びからだろう、と。


『だから今日は雛森と結婚式に行って来たんだよ』

「そ、そうだったんですか〜・・・?」

『言わなかったか?』

「聴いてませんよぉ〜っ!!」


予想外の展開に体中の力が抜けていく。勘違いだったことが恥ずかしくて、でも同時にとっても安心して、嬉しくて。流しきったはずの涙がまた溢れていく。


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