小噺
□好みのタイプ
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キミの、あなたの、好きなタイプは・・・?
―好みのタイプ―
業務時間中の瀞霊廷、十番隊舎、執務室・・・そこに響くのは、紙を捲る2つの音。一つは隊首による、次々に仕上がっていく書類を捲る音。そしてもう一つは・・・・
「わぁ、これ可愛いっ!!」
それまで何かを真剣な面持ちで読んでいた乱菊がやや大きめの声を上げた。そしてそれに呼応するように書類に向き合う日番谷の眉間の皺が深くなる。だが、その皺の原因は悪びれもせず、もう一度声を上げた。
「あぁ、これもっ!!」
『・・・・で?お前は何をしてんだ?』
堪えきれず、日番谷は書類を仕上げる手を止め目の前に座る副隊長に問いかけた。
「え?」
『え、じゃねぇ。お前はさっきから、一体何を読んでんだ?』
「あぁ、現世の雑誌ですよ、とっても可愛い服が沢山載ってるんです」
その言葉に、それまで自分の副官は仕事をしている、と信じていた日番谷の眉間の皺が一層深く刻まれたのは言うまでもない。
『なるほどな・・・例によってまたサボってやがんだな・・・・?』
「違いますよぉ、これは研究です、研究!」
やだなぁ隊長ってば、と言う声の調子には反省の色など微塵も感じられず、隊長はどれが好きですか?などと訊ねてくる始末。それがまたしても日番谷の勘に触る。
『ほぉ、研究か、それは感心だな・・・』
発せられた言葉とは正反対に、怒気を混めた、ガン!という机を叩く音が響き渡る。
「な、なんですか隊長!いきなり机叩いたらビックリするじゃないですかぁ!」
『今は仕事中だっ!現世の研究なら休憩時間にやりやがれっ!!』
「違いますよぉ、これは隊長の研究です!」
真剣な表情で高らかに言い放たれた乱菊の言葉に、日番谷の動きが止まる。その表情には理解不能という文字が綺麗に浮かんでいる。
『・・・は?』
「だ・か・ら、隊長の研究なんですって!」
だから、とか言われても理解できねぇよ!と言う日番谷の言葉をサラリと受け流し、日番谷の目の前にバサリと雑誌を広げる。
「さぁ!」
『さ、さぁ・・・?』
「何ぼーっとしてるんですか、早く選んで下さいよぉ!」
『え、選べ・・・?』
いつの間にか押され気味になってしまい、何言ってんだよ、と言わんばかりの困惑の表情で乱菊を見やる。すると、も〜、と雑誌を指差し言う。
「この中だったらどれが好きですか?」
そして、隊長ってば全然話聞いてくれてないでしょ〜、と不満一杯に付け足した。
「私は、隊長の好きなタイプが知りたいんです!」
あまりにも真剣な眼差しで見つめてくる副官に、それこそ仕事中にやることじゃねぇだろ、という正論も言葉にすることが出来ない。
そして身を乗り出してくる乱菊から距離を取ろうと仰け反った瞬間、後ろから抱きしめられた。
「仕事せんで日番谷はんに迷惑かけんのはあかんけど、それはボクも知りたいわ〜」