小噺
□好みのタイプ
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『・・・いい加減にしろっ!!』
市丸と乱菊からすれば日番谷のために争っているのだが、日番谷からすれば腕も痛いし、いい迷惑でしかなく。これまでの我慢も限界で、ついに2人の腕を振り払った。
だが日番谷に怒られることなど慣れっこになっている2人。2人を均等に睨んでいる日番谷に臆することもなく話を進める。
「隊長がいけないんですよ?!」
『あん?』
「そぉやで!日番谷はんがハッキリしてくれへんから!」
反省もなく、あまりに堂々とした2人にの態度に、またしても日番谷は怒る気が失せていくのを感じた。
『・・・人の所為にすんじゃねぇよ・・・』
「だって事実ですよ!」
「そぉやっ!この際ハッキリ言うてぇや!」
『・・・何を?』
「「乱菊(ギン)とボク(私)どっちが好きなん(ですか)?!」」
身を乗り出して訊ねてくるその様子は、普段の2人からは想像も出来ない程に必死で。
日番谷は仕事にもこのくらい真剣に向き合ってくれたらいいのに、と溜め息を吐いた。
「で?どっちですか?」
『2人とも・・・・』
「え・・・何?」
『2人とも・・・好きじゃねぇ』
「「?!?!」」
それは拗ねた子どもが言う強がりの様なセリフだったのだが、この2人・・・いや、日番谷に想いを寄せている者にとってはこれ以上ない程の打撃で。
「え・・・えっ?!」
「な、何でやのっ?!」
ショックを隠せない2人は嘘だろうという様子で日番谷に詰め寄る・・・が、日番谷はあくまでも冷静、というよりも少し冷たく言い放った。
『俺は仕事が出来る奴が好きなんでな』
言いながら立ち上がった日番谷は、どこかに書類を渡しに行くのだろう、2人を後目にスタスタと扉の方へと歩き出した。
そして『朽木とかは仕事が出来ていいよなぁ・・・』と言い捨てて執務室を出て行った。
それは何処か芝居染みた、日番谷としては冗談のつもりの一言だった。
・・・だが暫くして執務室に戻った日番谷を迎えたのは、久しぶりに真面目に取り組む副官と、机の上にやたら目立つように置かれた“仕事してきます!”というメモだった。
『・・・単純な奴ら』
予想していなかったその様子に、そう笑いながら呟く日番谷だったが、次の日、やたらと仕事に励む同僚たちや部下たちを見て、自分の放つ言葉の重みを知ることになるのだった・・・・。
Fine.