小噺

□踊らされる運命
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「あ、いえ、その・・・」

『うん?』


上手く誤魔化そうとしたが、先を促す様な日番谷の視線がそれを許そうとはしなかった。檜佐木としても、日番谷の気持ちを確かめるチャンスだった。


「あの・・・俺たちって・・・どういう関係なんでしょうか・・・?」

『・・・はぁ?』


いきなり何を言い出すんだ、という様な日番谷の表情に檜佐木はもっとはっきり尋ねる必要を感じ、言い直した。


「あ、その・・・俺たちって・・・つ、付き合っているんでしょうか・・・?」


意を決し、一気に言い切って、日番谷の答えを待つ。そして返ってきた言葉は・・・・


『俺はそう思ってたが・・・違うのか?』


日番谷は意外そうとも不思議そうにも見える表情で逆に檜佐木に問いかけてきた。


「い、いえっ、違わないです!」

『つーか、お前が好きだって言ってきたんじゃねぇか・・・』


何を今更、と少し呆れ気味に檜佐木を見遣る。その表情が自分たちが付き合っているのは当然だろうと言っているようで、檜佐木の心を舞い上がらせた。


「でも・・・不安だったんすよ・・・隊長から好きだって言われたわけじゃなかったんで・・・」

『あ?そうだったか?』

「そうですよ・・・」


だから不安だったんです、と少しいじけた様に言う檜佐木に日番谷は苦笑を浮かべた。


『大丈夫だよ』

「大丈夫って言われても・・・」

『ちゃんと想ってるから』

「・・・へっ?!」


さらりと放たれたその言葉に檜佐木は自分の耳を疑った。


「え・・・それ、どういう・・・」

『だから・・・俺もお前のこと、好きだから』


そっけない様な口調だが、明らかにそれは照れ隠しで。初めて聴いた嬉しすぎる2文字に、檜佐木の顔はあっと言う間に赤く染まっていった。


「い、今のもう一回言ってくださいっ!」

『はぁ?!そんなに何回も聴いてたら有難みがなくなんじゃねぇか』


馬鹿なこと言ってねぇで早く行くぞ、と言って背を向ける日番谷。その腕を檜佐木が慌てたように引っ張った。


『あ?何だよ?』


まだ何かあんのかよ?と言う様に日番谷は檜佐木の顔を覗き込んだ。その可愛らしさに思わず眩暈を覚える檜佐木だったが、思い切ったように願い出た。


「あの・・・キ、キスしても・・・いいっすか・・・?」

『なっ・・・?!』


その突然の申し出に、驚いた様に目を瞠った日番谷は、耳まで真っ赤にした檜佐木を見て、少し俯き加減で小さく答えた。


『だめ』

「えぇ?!」

『・・・まずは飯を食ってからだ』

「え・・・じゃあ・・・・」


飯食った後ならいいんですか?と尋ねようとした檜佐木だったが、少し焦っているような日番谷の表情に言葉を飲み込んだ。

俯いて顔にかかった銀色の隙間から見えた頬が赤みを帯びていたのは、檜佐木の見間違いではなかった。






日番谷の言葉が、行動が、表情が、その全てが檜佐木の心を惑わせ、舞い上がらせる。


(あぁ本当にこの人は・・・どれだけ俺を虜にすれば気がすむのだろう・・・)


ドキドキと跳ね上がる心臓の音が日番谷に聴こえはしないだろうかと心配しながら、きっと自分は日番谷に踊らされ続ける運命なのだと思う檜佐木だった。







Fine.

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