小噺

□居酒屋相談所
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(うぅ・・・京楽が変なこと言うから、何だか妙に意識してしまう・・・)


そんな浮竹の心情を知ってか知らずか、京楽が口を開いた。


「浮竹は日番谷くんに話があるんだよね?」

「なっ・・・?!」

『話?何だよ?』

「え、え〜っと・・・・」
(京楽の馬鹿野郎・・・!余計なことを・・・!!)


もちろん京楽の言う“話”とは告白のこと。だが告白など出来ようはずもなく、浮竹は下を向き、再び黙り込んでしまった。


『おい、浮竹?』


心配するような声色で先を問いかけてくる日番谷に、チラリと覗き見た日番谷の気遣わしげな表情に、浮竹は益々混乱していく。


(ああぁ・・・どうしよう・・・ていうか、今日も可愛いし、優しいなぁ・・・じゃなくて本当にどうしよう・・・・っ!)


今にも頭を抱え込んでしまいそうな浮竹に京楽は笑いを堪え、日番谷は眉間に不審の色を濃くしていった。


『おい・・・』


もう一度問いかけようとした時、日番谷は何かに気が付いたかのように浮竹に近づいた。そして・・・

――ぐいっ


「へっ・・・?!」


それまで床に向けていた自分の視線が急に上に上げられたことに浮竹は戸惑った。

更にそれが日番谷の手に因るものだということ、そして日番谷の顔がすぐ近くにあるということが一層彼を戸惑わせた。


「え、なっ・・・・?」

『・・・やっぱり』

「・・・やっぱり?な、何が・・・?」

『お前、顔真っ赤だぞ?』


飲みすぎだろ?と言いながら小さな手で浮竹の頬をそっと包み込む。無論、それがこれ以上ない程に浮竹を赤くしていくことなど、本人は気付いていない。

嬉しさと恥ずかしさと困惑で浮竹は今にも気絶してしまいそうで。それまで楽しそうに傍観していた京楽も流石に気の毒に感じたのか、助け舟を出す。


「そうなんだよ。ちょっと飲ませ過ぎちゃったみたいで」

『ったく、お前らは・・・』

「ごめんごめん。だからさ、日番谷くん、浮竹のこと送ってやってくれない?」

「?!」


その台詞が浮竹の意識を上昇させた。


「で、でも、冬獅郎は用事があるんだろう?」

『別に構わねぇよ。お前のが心配だ』


さらりと放たれるタラシ言葉に、浮竹は言葉を詰まらせ、京楽は苦笑した。


「じゃ、よろしくね〜。僕はもう少し飲んでくから」

『・・・程々にな?伊勢が泣くぞ』

「・・・了解」


京楽の短い返答に日番谷は苦笑すると、その表情のまま、驚くほど自然に浮竹の手を取った。


『ほら、行くぞ?大丈夫か?』


その声は普段はあまり聴くことの出来ない優しげなもので、向けられた当人ではない京楽までもがドキリとさせられる程だった。




京楽は店を出て行く二つの背中を見送って、どちらが年上だか分からないな、と苦笑した。

そして、溜息混じりに呟いた。


「困った奴だな・・・」


それは、日番谷に手を引かれて戸惑いつつも嬉しそうな浮竹に向けられたものなのか、無意識に周囲をタラシ込んでいる日番谷に向けられたものなのか。

・・・それとも浮竹をほんの少し羨んでいる自分に向けられたものなのか、彼自身にも不明瞭だった。







Fine.
おまけ有り→


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