小噺
□君ありて幸福
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『・・・・で?何でお前がここに居るんだ?』
頭上から、少し怒ったような冷ややかな声が響く。
「・・・きゅ、休憩中、やから?」
『ほぉ・・・?てめぇの休憩は一体何時間あるんだよ?』
あぁ・・・めっちゃ怒ってはるし。声を荒げないんが逆に迫力があんねんな。
・・・・そら日番谷はんが怒るのも無理はない。さっきの今やし。今度は仕事してから、って言われたばかりやしね。
せやけど、どうしてもすぐに渡したくなってしもうたんやもん。
『つーか、いつからうちのソファはお前の休憩場所になったんだよ?』
「す、すんません・・・やけど、立って待つんもなんやし・・・・」
一気に気温が下がったように感じたんは・・・・気のせいやないみたいやね。
「す、すぐにおいとまします!ただ、これを日番谷はんに渡したくてっ!」
立ち上がって、手に持ってたモンを日番谷はんに差し出す。
『・・・花?』
「うん、現世の花なんやて。可愛らしいやろ?」
『確かにな。でも何で俺に?』
「ほら、この部屋、なんや殺風景やろ?」
『・・・余計なお世話だ』
「花があれば、日番谷はんも和むやろうし」
『・・・・ふぅん』
ま、悪くはねぇな、なんて言いながら、少しだけ微笑んで受け取ってくれる。この姿を可愛くないなんて言う奴がおったら見てみたいわ。
「それにな?これはボクの気持ちやねん」
『・・・お前の気持ち?』
「そ。これがボクの幸せや」
『・・・花を贈ることがか?』
意味が分からない、というような表情もこれまたなんとも言えず可愛らしい。
「ちゃうちゃう。・・・日番谷はん、花言葉って知ってはる?」
『花言葉?』
「そや。花にはそれぞれ意味があるんやて」
『へぇ・・・』
「で、この花の花言葉が、ボクの幸せとぴったり一致したんや」
『何て花言葉なんだ?』
「内緒♪」
『・・・はぁ?』
「・・・いつか、キミに分かってもらいたいわ」
『だったら、教えろよ・・・・』
「さてと。ほんならボクは帰りますわ。またね〜」
『あ、おい、市丸?!』
その花の持つ言葉を、いずれキミにも知って欲しい。そして、いずれキミも同し気持ちになってくれたら・・・幸せ過ぎて死んでしまうかも知れんな。
ボクが日番谷はんに贈った花はゼラニウム。赤くて小さい可愛らしい花。
花言葉は“君ありて幸福”
その言葉は、まさにボクの気持ちそのもの。怒られても、呆れられても、これだけは譲られへん。
――キミが居る、ただそれだけで、ボクはこんなにも幸せ。
Fine.