小噺

君ありて幸福
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『・・・・で?何でお前がここに居るんだ?』


頭上から、少し怒ったような冷ややかな声が響く。


「・・・きゅ、休憩中、やから?」

『ほぉ・・・?てめぇの休憩は一体何時間あるんだよ?』


あぁ・・・めっちゃ怒ってはるし。声を荒げないんが逆に迫力があんねんな。

・・・・そら日番谷はんが怒るのも無理はない。さっきの今やし。今度は仕事してから、って言われたばかりやしね。
せやけど、どうしてもすぐに渡したくなってしもうたんやもん。


『つーか、いつからうちのソファはお前の休憩場所になったんだよ?』

「す、すんません・・・やけど、立って待つんもなんやし・・・・」


一気に気温が下がったように感じたんは・・・・気のせいやないみたいやね。


「す、すぐにおいとまします!ただ、これを日番谷はんに渡したくてっ!」


立ち上がって、手に持ってたモンを日番谷はんに差し出す。


『・・・花?』

「うん、現世の花なんやて。可愛らしいやろ?」

『確かにな。でも何で俺に?』

「ほら、この部屋、なんや殺風景やろ?」

『・・・余計なお世話だ』

「花があれば、日番谷はんも和むやろうし」

『・・・・ふぅん』


ま、悪くはねぇな、なんて言いながら、少しだけ微笑んで受け取ってくれる。この姿を可愛くないなんて言う奴がおったら見てみたいわ。


「それにな?これはボクの気持ちやねん」

『・・・お前の気持ち?』

「そ。これがボクの幸せや」

『・・・花を贈ることがか?』


意味が分からない、というような表情もこれまたなんとも言えず可愛らしい。


「ちゃうちゃう。・・・日番谷はん、花言葉って知ってはる?」

『花言葉?』

「そや。花にはそれぞれ意味があるんやて」

『へぇ・・・』

「で、この花の花言葉が、ボクの幸せとぴったり一致したんや」

『何て花言葉なんだ?』

「内緒♪」

『・・・はぁ?』

「・・・いつか、キミに分かってもらいたいわ」

『だったら、教えろよ・・・・』

「さてと。ほんならボクは帰りますわ。またね〜」

『あ、おい、市丸?!』









その花の持つ言葉を、いずれキミにも知って欲しい。そして、いずれキミも同し気持ちになってくれたら・・・幸せ過ぎて死んでしまうかも知れんな。



ボクが日番谷はんに贈った花はゼラニウム。赤くて小さい可愛らしい花。


花言葉は“君ありて幸福”



その言葉は、まさにボクの気持ちそのもの。怒られても、呆れられても、これだけは譲られへん。

――キミが居る、ただそれだけで、ボクはこんなにも幸せ。






Fine.

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