小噺

氷輪の涙
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うすうす気が付いてはいたんだ。日番谷隊長には誰か好きな人が居る、って。

でも、認めたくなかったんだ。
自分の想いに気付いた途端に失恋だなんて、辛すぎるから。


だけど、もう認めざるを得ない。


いつも勘が鋭くて、周りに人が居ればすぐに気付く日番谷隊長が、今は誰かを想って、俺の存在になんて気付いてくれない。


(・・・こっち、見てくださいよ・・・)


それまで感じていた雪が降っていることへの喜びなんてもう何処かえ消え去って、残ったのは顔も知らない奴への嫉妬心。

どうにかしてこの雪を、日番谷隊長の涙を止めたくて、だけど何も出来なくて・・・居た堪れなくなって、自分の不甲斐無さを感じながら、俺は部屋に戻ったんだ。


――翌朝、あんなに降った雪は、跡形も無くなっていた。それがすごく日番谷隊長らしくて、積もっていたら嫌だと感じていた筈なのに、余計に俺の胸を締め付けたんだ。






そして今年もその日が来た。よく晴れて、雪なんて降りそうにもない。だけどきっと・・・いや、必ず今年も降るのだろう。


これまでは部屋の中で胸を痛めることしか出来なかったけど、今年こそ、隣に行けたら、と思う。

あの人の気持ちは変わらないのかもしれない。
俺には何も出来ないかもしれない。



それでも。



少しでも近づきたいから。
人知れず涙の代わりに雪を降らすことしか出来ない、あの人の強さと弱さを受け止めたいから。



だから、日番谷隊長?
今夜はあなたの分のマフラーも用意して、あなたの隣へ行ってもいいでしょうか?

俺は何の力も持ってはいないけど、全力で、あなたの涙を受け止めますから。
だからせめて隣に、あなたの傍に居させてください。



そして出来れば、俺の気持ちに、気付いてください・・・・・








Fine.

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