小噺
□出会い
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「何しとるん?」
「あ?何だよ、邪魔すんじゃ・・・え?!」
「「い、市丸隊長?!」」
「なぁ・・・何しとったん?」
自分でも、いつも以上に怖い笑みを浮かべとるんが分かった。何で?そないなこと分からん。意図的な威嚇やない。なんや腹が立って、無意識にそういう表情になってもうたんや。
「・・・この子に何か用?この子、ボクに書類持ってきてくれたんやけど」
「「「え・・・いや、その・・・・」」」
「あらら、書類、散らばってしもとるやん。どないしたん、これ?」
「い、いえ、俺たちは偶々通りかかっただけで・・・なぁ?」
「そ、そうなんです。あ、仕事に戻らないと!」
「「「し、失礼しますっ!」」」
文字通り、飛ぶように逃げ去る隊士らの背中に威嚇の笑みを放った後、ばっと少年の方に振り返った。
「大丈夫やった?怪我してへん?」
すんなりと出てきた、本心からの心配の言葉。表情も、さっきまでのもんとは違うと思う。そんな自分に驚いた。
『はい。ありがとうございました』
礼儀正しく、すっと頭を下げる小さな子。余計なことをしてもうたかな?と思っとったから、その素直な謝意に、何だか照れくさいような気分になった。
そんな気持ちを隠すように、表情を普段のものに切り替えて、誤魔化すように書類を拾いながら話を続けた。
「・・・今の、十一番隊の奴らみたいやったね」
『ええ・・・たまにあるんすよ。俺、新米なんで』
仕方ないっす、と言う声は今までに聞いてきたどの声よりも凛としとった。
「・・・せやけど危ないやん」
『今のとこ怪我するようなことはないんで、大丈夫っすよ』
「やけど!・・・日番谷クンは悪ないやん」
少し大きな声になってもうたことにハッとする。日番谷クンも少し驚いたように目を見開いとった。そしてふわりと柔らかい表情を浮かべはった。
『心配してくれて、ありがとうございます』
真っ直ぐな台詞に、真っ直ぐな瞳。ボクんことを怖がる素振りもない穏やかな笑み。慣れないそれらに、どうしていいか分からず固まってまう。そんなボクの様子なんて知る由もなく、日番谷クンは質問をぶつけてきた。
『つーか、何で俺のこと知ってるんですか?』
「え・・・?」