平行
□ボクらの〜プロローグ〜
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全ては、思いがけない母の一言から始まった。
ボクらの〜プロローグ〜
「ねぇ冬獅郎・・・お母さん、再婚してもいい・・・?」
突然の母からの問い掛けに、いつもと同様に、少し遅めの夕食を母と2人で食べていた冬獅郎の手が止まった。
『・・・は?』
それは別に、反対の意味で発せられた言葉ではなかった。ただあまりにも突然の提案で、少しばかり驚いてしまったからだった。
だがその言葉は、母にとっては拒絶に聞こえたようで。
「あ、冬獅郎が嫌なら・・・しないから」
そう言う母の顔は普段の明るいものからは想像出来ないほどに切なげで、冬獅郎は思わず息を呑む。
(母さんもこんな顔するんだな・・・)
大きいと思って見てきた背中や肩は、今ではもう冬獅郎のそれよりも小さく、弱弱しくも思える。それでも母は泣き言一つ言わず、女手一つで自分を育ててきてくれた。
今まで誰にも頼ることの出来なかった母が、その相手を見つけられたのだ。そのことは、冬獅郎にとっても喜ぶべきことだった。
「ごめんね、この話はもう止め・・・」
『いいよ』
「・・・え?」
『母さんがしたい様にすればいいよ。母さんが選んだ人なら、いい人に違いないし』
俺は母さんを応援するよ、と囁くように柔らかい笑顔で言う冬獅郎に、母はありがとうと涙ぐみ、まるで少女のような笑顔を返した。