平行
□ボクらの〜プロローグ〜
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(家族が増えんのか・・・)
夕食を終え、自分の部屋に戻った冬獅郎は、先程母から聞いた新しく家族になる者たちのことを考えていた。
母の話によると、相手の男性は外資系の仕事をしていて、一年のほとんどを海外で過ごしているらしい。だから正式に結婚すれば、母もそれに付き添い、海外で暮らすことになるだろう。
「冬獅郎はどうしたい?」
そう母に尋ねられた時、冬獅郎は言葉を詰まらせた。愛着が湧いた学校を離れなければならないのかと思うと、すぐに答えは出せなかったのだ。
(付いてったほうがいいのかな・・・)
うぅ〜ん、と悩む頭に、もう一つ母が言っていた重要なことを思い出す。
(そういや、向こうにも息子がいるんだったな)
相手方の事情は複雑らしく、冬獅郎と同い年だという息子は、京都の祖父母の家で暮らしているらしい。
(兄弟、か・・・)
どんな感じなのかな、と想像して少し微笑む。
(いい奴だと・・・仲良くなれるといいな・・・)
一人っ子の冬獅郎にとっては、兄弟というものは憧れで、ずっと欲しかったものだった。それが不思議な形で手に入るかと思うと、少し運命めいたものを感じる。
(でも家族一緒に、ってなると、やっぱ海外でってことだよな・・・)
新しく増える家族。出来ることならば一緒に暮らしたい。それでもやはり学校のことが気に掛かって。どうするべきかと悩む冬獅郎だったが、ふわりと眠気が瞼を撫でるのを感じて、目を閉じる。
(今度の日曜に食事するって言ってたな・・・)
その時までに決めればいいか、と考えることを半ば放棄して、冬獅郎は眠りについた。
Essere continuato.