小噺2
□まぁ、いっか。
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それは・・・俺の所為、なのか?
―まぁ、いっか。―
あぁ・・・きっと、この扉を開けたら見たくないものを見ることになるんだろうな。
見たくない、現実を。仕事をせずに惰眠を貪る、副官の姿を。
そんなことを考え、執務室の前でふぅっと重めの息を吐き、日番谷は扉を開けた。
・・・・が、開けてすぐに日番谷は目を丸くした。
(あれ、起きてる)
まずそのことに驚き、次いで信じがたい光景に少し焦った。
(つーか・・・え?泣いてる、のか?)
どう見ても涙を流している。ソファに座り、少し俯き、なんとも哀しげに、ハラハラと。その姿は普段の乱菊からは想像も出来ないほど儚げだ。
しかも余程哀しいのだろうか、戻ってきた日番谷にも気付かず、ただただ涙を零している。
今まで、嘘泣き以外に乱菊の泣いている姿を見たことがなかった日番谷は、一瞬固まり、そして少し頭を悩ませた後、少し戸惑いながら声をかけた。
『おい、松本・・・?』
その声に顔を上げる乱菊は日番谷の顔を見るや、一層哀しげな表情を浮かべたかと思えば、物凄い勢いで日番谷に抱きついた。
『ぅおっ!?』
いきなり抱きつかれたことに少しは驚いたものの、日番谷としては乱菊が泣いているということの方に戸惑っていた。
どうするべきかと少し悩み、優しく抱きしめてみる。
『一体・・・どうしたんだよ?』
その声はいつになく優しげで、気遣わしげで。泣き止まそうと声をかけたつもりだったのに、その声によって乱菊は益々涙を零す。
『お、おい・・・』
「何でそんな優しくするんですかぁ・・・」
『何でって・・・お前が泣くから』
「うぅっ」
一向に泣き止まない乱菊に、日番谷は困り果て、もう一度心配そうに問いかけた。
『何で泣いてんだよ・・・?』
「そ、それは・・・」
『それは?』
「た、隊長が・・・」
『俺が?』
俺がなんだよ?と身体を離し、先を促すように乱菊の顔を覗きこむ。そんな日番谷に乱菊は涙を堪え、小さな声で答えた。
「わっ、私のことっ、き、嫌いって言ったからぁ・・・」
それだけ言うと、再び乱菊の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。