小噺2
□最高のご褒美
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・・・まいったね、どうも。
―最高のご褒美―
日も暮れ、窓からそよぐ風も冷たい。
「だいぶ寒くなってきたねぇ・・・」
そんな執務室で独り、少しだけ感慨深げに京楽は呟いた。
「寝てばかりいないで、たまには真面目に仕事してください!」
京楽が有能な副官に怒られたのは昼間、いつものように屋根の上で昼寝を決め込もうとしていたときのこと。
その顔がいつも以上に真剣で、流石にマズイと思ったのか、渋々仕事をすることに決めたのだった・・・が、目の前に積まれたあり得ない量の書類に、早々に眩暈を覚え、直ぐに脱走を試みようとした。
だが、一度席に着いたが最後。
横からは有能な副官が怖い程に目を光らせ、仕上げた書類を届けに来た隊士は目に涙を浮かべ感動してしまう始末で。
逃げたいが逃げられない状況に追い込まれてしまったのだった。
そして気が付けばいつの間にか日も暮れ、隊士たちも殆ど残ってはいないという時間になってしまったのだ。
「・・・もういいかなぁ?」
参りました、といったように呟き、定時で仕事を終えて帰った副官の言葉が蘇る。
“終わるまで、帰ることは許しませんよ”
その口調が含む恐ろしい程の迫力を思い出し、少し身震いする。だが、
「・・・これだけやれば、許してくれるよね?」
京楽の限界はとうに過ぎていた。
僕にしては上出来だよ、七緒ちゃんも分かってくれるよ、と自己弁護染みた独り言をしつつも、まだ少し残る書類を振り返ったのは、少し残る罪悪感だったかもしれない。