小噺2
□変わってる
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まぁ、なんつーか。
―変わってる―
隊首の俺が言うのもなんだが、うちの隊は変わってる。
いきなり何を、と思われるかもしれないし、俺としても頭が痛いところなんだが、これは紛れも無い事実だ。
どんなところが?と聞かれると、何とも一言では答え難いが・・・例えば普段、仕事をしている時。
何故だかは分からないが、俺が様子を見ようと出て行くと、いつもどこか緊張しているような、それでいて照れくさそうな、嬉しそうな顔をしている。
頑張っているな、と思い声を掛けたら目を潤ませる奴がほとんどだ。
俺って、そんなに怖いのか?そんなにあいつらのこと褒めてねぇか?そりゃ、少し厳しく指導することもあるが、自分的には、褒めるべきときは褒めていると思うんだが・・・・
「たーいちょ♪」
そんなことを結構真剣に考えていると、突然視界が金色で埋め尽くされた。何で、なんてこと思わねぇ。原因は明らかだ。
『・・・近ぇよ』
少し仰け反って、俺の目の前5センチくらいに現れた副官の顔を押し返す。
「冷たいですよ隊長!心配して近づいてみたのにぃ!」
『近づくにも限度ってもんがあんだろうが』
スキンシップですよ!なんてブーブーと文句を言う松本に思わず溜息が出る。
まぁこれも毎度のことで、俺も慣れたが・・・他の隊の隊長と副官もこんな感じなのか?そう思って想像してみるが、気持ちが悪くなりそうなので止めた。
「隊長?何か考え事ですか?」
『・・・ちょっとな』
「何で背が伸びないんだろう、とか?」
『はは、殴っていいか?』
「心配しなくても大丈夫ですよぉ」
私は背なんて気にしませんから!と訳の分からないことを言い抱きついてくる松本に、今日二度目の溜息を吐き、押し返す。
『・・・痛ぇよ』
「ちょっと隊長?!それ美女に抱きつかれた男の反応として間違ってますよ?!」
『はいはい。つーか何か用があったんじゃねぇのか?』
「あ、そうだった!今日は稽古の日ですよ。皆、道場に集まってます」
『ああ、そうだったな』
俺が隊長になってから、隊士たちとの約束で、暇な時、最低でも月に一度は剣の稽古をすることになっている。
『今日は第二班だったか』
「はい、そうですよ」
最初の内は全員でやっていたのだが、人数が多すぎてどうにも時間が掛かること、全員稽古となるとどうしても仕事が滞ってしまうなどの理由で四つの班に分けて、順番に行うことに決めたのだ。
普通、稽古なんて辛いし、たぶん俺は厳しい方だから嫌だろうと思うんだが、隊士たちは何故か楽しみにしているらしい。
「やっと稽古の日ですね。皆心待ちにしてたんですよ」
なんて満面の笑みで松本が言うから、多分本当にそうなんだろう。
「私も楽しみにしてたんですよ?」
そう付け足す様子はとても嬉しそうで、いつも仕事をサボってる奴とは思えない。
何でだよ?十一番隊じゃあるまいし、普通は稽古の方が嫌なんじゃないか?・・・こいつも大概、変わった奴だ。