REBORN novel

□忠誠は誓わない
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イタリアのボンゴレ本部にやってきて、
まず案内されたのはXANXASを氷付けにしたという地下の広間。

いまだ悲しい争いの傷跡が残る場所。
XANXASの深い悲しみ、九代目の苦悩がわかる場所。

そんな場所で九代目と二人でボンゴレリングの正式な継承を交わした。
大空のボンゴレリングを守護する者として歴代のボスへ『覚悟』を示す
大事な『継承の儀式』で何年か前に行った未来でやったこと。
すでにボンゴレリングの力を武器に灯せられるのでその点は簡単に終わったけど、
極限状態まで追い詰められたので…すごく疲れている。


それが終わって、九代目と別れた俺は九代目の秘書だという男の後をついて一つの部屋に案内された。
豪勢な金の細工がされている椅子一つと赤い絨毯が敷き詰められている部屋
…いわゆる接見の間と言ったところだろう。

ここで待つようにといわれて、唯一興味の引く椅子へと自然に目をひく。
近寄ってその細工を確かめた。
木を椅子の形に組み立て、金細工が装飾された脚と背もたれに肘かけ。
座る人物のちょうど頭の項に当たるところにボンゴレノ紋章が彫られている。
その高位の人物の背や腰を痛めぬようにと敷いた綿を赤の布で包まれている。
あぁ、坐する面も…固さなど感じぬほど柔らかい。

これはボンゴレのボスが座る椅子らしいが、俺には不相応な椅子だ。
せいぜい、XANXASか雲雀さん…骸が座ると様になるだろう。
本来の俺なら彼らの足置きにされるような扱いが妥当だ。
馴染みのない素材で作られたであろう。
日本の一般家庭に住んでいる俺にとって物怖じするような高級家具…


そういえば、九代目の秘書に
「そちらに座って待っていてください」と言われたが…座れるか。こんなのに。
俺の性分じゃないと、ため息を吐きながら椅子と向かい合わせで床へ座り込んだ。
こんな椅子を作って権威を示して何が楽しいんだ。先代たちは馬鹿じゃないのか。
後世に俺みたいな庶民で、ダメで、馬鹿な奴が、ボンゴレを継ぐことになるって思わなかったのか。


あぁ、だから驚いた顔をしていたのか。
さっき起きた出来事を思い出して笑える。
『お前が後継か』『ずいぶん気弱そうな奴が継ぐものだ』
そういわれて『俺もそう思えます』と言ったら大笑いされたな。


ただ一人を除いては。


『だが、その資格がある。』とボンゴレT世は言った。
確かに死ぬ気の大空の炎と『見透かす力』と『超直感』を持ち、
大空のボンゴレリングに認められている、と。

T世、俺は分かっているんです。
資格はあっても器じゃないってことを。

人に指示を出すことや人を傷つけることを厭わないたいそう偉いマフィアのボス。
欲のためならどんなことをしてもかまわない。
そんなの俺はなりたくない…しかし、大切な人を守りたい力を求めるうちに…
『ボンゴレ十世』の地位を担う決意をせざるを得なかった。



「…いつまで待つんだろう。」
この部屋に入って数分と経ってないけれど、そう思って入ってきた扉を見る。
いつまで経っても開く気配はない。










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