REBORN novel

□忠誠は誓わない
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正直言って、日本からの荷物が届いているであろう部屋で休みたい。
腕時計の長針が六つ進んでも、誰もやって来ない。
もう待ちきれない、と椅子の座面を枕に寝ることにした。
前の九人分の薫りが漂ってくるであろうから、
腕を敷いて直接そこに顔をつけないようにして伏せた。

「…俺はボンゴレX世になるけれど、ボンゴレのためになんか働きませんからね。」
だから、こんなものには座らない。座れば認めてしまうことになる。
ボンゴレファミリーの十代目を継ぐことを。座ってたまるか。












イタリアへ旅たつ前の夢をみた。
九代目との約束の時間は現地時間で朝だったので、それにあわせて出立は夜にした。
海外へ移住すると聞いた元同級生たちが、お別れの宴会を開いてくれて…別れを惜しんでくれた。
嫌な思い出とか苦しかった日々とかあったけど、それを乗り越えてこられたのは…仲間のおかげだ。

「じゃあ、飛行機の時間に遅れるし…もう行くね。」
元より飛行機の時間があるからと一次会のみの参加だった俺は、みんなと別れを済ませ…宴会場を出た。
俺が出た後、中から二次会の相談を大声でするみんなの声が聞こえる。
そして、目の前に馴染みの五人の姿がそこにいた。

「行くのか、ツナ。」
「…うん、九代目との約束もあるし…」
「十代目っ、俺もいきます!!」
「駄目だよ、獄寺くん。」
「なぜだ、沢田。もとより俺たちは、お前と共にあるときから決めているぞ。」
「私も、ボスのお手伝い…するつもり…」
「駄目なんです、了平さん。それにクロームも。骸もさ…君に危険な世界に行って欲しくないと思うよ。」
「それは君もだろ、沢田綱吉。君ほどその世界に似合わない人はいないよ。」

リボーンはいう。
ボンゴレリングの守護者として彼らはボンゴレの幹部に所属することになっている、と。
嫌だと俺は駄々をこねた。
俺のせいで友達を、大切な仲間を血塗られた世界に連れてくるなんて。
何度拳銃を向けられてもそれだけは従いたくなかった。
武器を手に戦い、血に汚れさせたくない、仲間にさせたくないから、俺はボンゴレを継いで…彼らを解放する。


ただ一つ、気持ちに整理がつかない状態のなかで、それだけは固く決めていた。



「いえ、俺は決めたんです。」
そんなことはさせない。必ずみんなを解放してみせる。
だから、皆は日本にいてほしい。普通の生活をして欲しい。
「ここでお別れだよ、みんな。」














たった半日前の出来事だというのにもう夢にまで見るのか。
思えば、俺は友達なんて出来ないタイプだった。

獄寺くんや山本がいたから毎日学校に通えたし、
お兄さんがいるからあらゆる戦いを越えてこられたし、
雲雀さんがいるから絶対的に勝てる自信があったし、
クロームの何気ない言葉が心の糧になったし、
骸の巧みな幻術や計画的な行動がなければ今まで生きてはいなかったし、
ランボの存在は大切な人を守るっていう意思を確認できた。

みんながそばにいてくれるから頑張れた。
みんなが俺を好きだと言ってくれるから守る勇気をもらった。
だから――…


いま思えば、随分大胆なことをしたものだ。
自分から『友達』の縁を切るだなんてこと初めてのことだ。

目をこすって、重い瞼を開けて、あれ、と気づいた。








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