『永い時の中で』

□未来の果て 第二話
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人間誰しも出来ないことがあるもんだ。














晴明は部屋の縁側に座っていた。片側にはお茶を、もう片方には封書がある。
その晴明の側に二人の神将が顕現する。朱雀と天一である。

「…またですか、晴明様。」
「うむ……しつこいのぅ。」

神将たちは大いに驚いた。
この時代、陰陽師の力や見鬼の才の持ち主を『霊能力者』と呼ぶということを。国は違えど魔物を倒す『悪魔祓い師』も『聖職者』もそうだとか。
目に見えぬ事件を扱う、昔で言う陰陽寮に似た役所を『能力省』という。その名のとおりこの国の国家組織であり、ここで妖退治士として登録証を作らねば罰を受ける。


「紅蓮が言うには戦争が始まった頃から登録が始まり、国家の道具にされていたというが。」

『登録しておくほうが面倒なことにならん』と紅蓮が言ったから、仕方なしに登録したのに。登録してもめんどくさい。

「なんという話ですか?」
「ん?まぁ、偉い地位に座れと…な」
「お前が仕事を探しに行くから、そうなっているんだ。」

登録者は『能力省』から心霊現象解決の依頼が届き、それをやらなければならない義務と褒賞金が出る。逆もまた然りで、たいそう金に困っている登録者は命懸けの特級報酬の事件に取り込める。
いずれもそれは国の狗になることだった。

晴明も生活に困っていたときはそこを頼った。
そのとき『安倍晴明』の生まれ変わりで並外れた陰陽師の力を持つと大騒ぎになったことがある。それから人体実験をさせられたり、どこかの国の戦争の道具にされたり…それはもう酷い目にあった。

以来晴明は『能力省』の仕事は選ぶようになっている。そしてあまり好きではないとも。

「朱雀、跡形もなく燃やしておくれ。」
「おぅ。」

燃やした直後、玄関の方が慌ただしくなった。
本日の土門邸は夕刻まで晴明一人のはず。
吉昌の嫁咲子はパートに出掛けているし、吉昌や成親昌親は仕事で出掛けている。となると昌行、浩正たちか。本日も彰子は土門邸に泊まる予定だ。
天一を遣いに出そうかと思っていると部屋の襖が勢いよく開け放たれる。

「じい様、昌行でも駄目なんだ!」
「は?」

















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