『永い時の中で』

□未来の果て 第三話
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悪しき魔を抱くもの。
それは誰しも抱いているものだ。














時刻は朝六時。普段より一時間早く目覚ましを鳴らして起きる。
まだ傷の治りきっていない右腕を庇いながら注意して二段ベッドから降りる。

「浩正、起きろよ。」
「うーん…」

昨日の就寝時間は深夜一時。五時間しか眠ってなくて眠いのは仕方ないが、これも仕事だ。

「ほらっさっさと起きろ!!」

左手で掛け布団を引っ剥がして浩正を起こす。
その騒ぎに机の上で丸まっていた物の怪も顔をあげる。

夜のうちに妖や魔物が校内に現れても、朝の光から逃れるように姿を消していくものが大概だが。
昨日のあれの気は妖たちを引き寄せるものだ。学校の土地で力を溜めた妖たちで満ちあふれているだろう。夜も遅いことから俺と浩正は、誰かが登校してくる前に朝早くから退治していくことにした。

一度で起きない浩正の頬をきつく引っ張って、学校に行く準備をして出掛けた。すでに起きていた母さんが驚きながら朝食に食べるようにとおにぎりを作ってくれた。
昼食の弁当は神将の誰かに届けてもらうと言って俺たちを見送ってくれる。








学校へと走りながら浩正は肩に乗っている物の怪に訊ねた。

「悪しき魔を抱くものってなに…?」
「確か…西洋の黄泉にあたる世界の住人だったか?」
「つまり『悪魔』ってことさ。」

悪魔は人と契約を交わし、その代償に魂を食っていく知識ある魔物の種だ。
あの魔物は『主』がどうとか言っていた。要するにあいつは悪魔の部類に入るということだろう。

「契約もしていない下級の悪魔に一度会って退治たことあるけど…。日本の妖と性質が違うって感じたよ。浩正も思わなかった?」
「いや、全然」
「はぁ?」
「俺、お前と違って経験少ないしー。無理言うなよ。」

お、浩正くん。それは言い訳と言うんだよ。




話している内に学校に着いた。予想通り、グラウンドは妖たちの巣窟だ。教諭たちや運動部の朝練がやって来るまでにある程度数を減らさなければならない。

「よっし、浩正。鞄を出せ。」
「うん」
「俺は教室に鞄置いてくる。だから俺が戻るまで数減らしといて。」
「え、えー!!この量を一人でー!?」
「これも修行じゃ修行じゃ。」「じい様の真似すんなー!!」










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