◆オリジナル◆

□『はい、馬鹿決定。』
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「お前も大概しつこいな」

デスクに肘をついた笹塚夏季は、細い綺麗な指先で目頭を押さえた。
昼休みにも執行部部室へ来て仕事をしているというのに、そこに邪魔が入ったのが許せない。
苛々しながらも、空いている片手はパソコンのキーを叩いている。

「俺と背比べしてナニが楽しい」
「楽しくない!!」
「じゃあしなくていいだろ!」

釣られて叫んでしまった。
頭が痛い。

「いいじゃないか。俺の身長は170。お前が0.5高いんだろ?」
「実際に確かめなければ、気がすまん!!」
「っ!!」

苛立ちマックス。
誰かこのバカを追い出してくれ。

「……判った、八王子」
「お。」

嬉しそうな顔がまたムカつく。

「背比べしてやる。その前に、その上げ底な靴を脱げ」

風紀委員が何故そんな紐でしばらなきゃならんような靴を履いているのか。
相変わらず謎な男だ。

屈んで靴紐をほどく八王子疾風(はやて)。
夏季はデスクにあった辞書をそっと持ち上げ、彼が立ち上がる際に通るであろう空中へとそれを差し出した。

3、

2、

1、


「いっ……ってぇ!!!!」

鈍い音がして、八王子の頭に辞書がヒットした。
頭上を押さえて悶える彼に、夏季は冷たく一言くれてやった。

「はい、馬鹿決定。」

バカ王子というあだ名を裏切らない男は、しばらく床で涙ぐんでいた。

―END―

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