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□涙を飲み込んで笑顔を作る
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皆に祝福され、祝言を挙げたのが昨日のことのように思い出される。実際、つい数年前の出来事なのだが、兎も角数年でこんなにも天下の情勢は変わってしまうものなのかと柄にもなく世の無常さを思った。





「長政様、私―」





強い風に乗って藤の花びらが舞う。ああ、初めて会ったときも藤が待っていた。もっとも、今の曇り空と違って綺麗な青空だったけれど。





「私、もうすぐ祝言を挙げるんです。勝家様と、」





長政様と祝言を挙げたのも最近なのに、もう貴方は居ないなんて信じられないけれど、私は生きてるから、現実を受け止めなくてはいけない。長政様がそれを望んでいるはずだから。





「勝家様は、とてもお優しい方です。本当に優しくて、まるで、長政様、みたいで…」





長政様は、笑ってくれているだろうか、最期にはご一緒できなかったけれど、私はずっと長政様を思ってます。
本当は直ぐにでも長政様の後を追いたいけれど、長政様は望まないだろうから。





「私は、幸せです。長政様」










涙を飲みこんで笑顔を作る












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