Short 1
□喪失感
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「ただいま。」
重々しく玄関の扉を開く。
「お帰り、ヒナちゃん。」
あからさまに落ち込んでいる私に、
お義母さんは何も訊かず、ただ柔らかく微笑みかけた。
そんな彼女の優しさが嬉しくて「ありがとう…」
と小さく呟き、私は自分の部屋へと向かった。
……………
ベッドに突っ伏し、枕を強く握っている私は、
とてつもない後悔と自責の念に駆られていた。
あの時何故あんな事を…………
走り去る私の背中を見届けるハヤテ君の寂しそうな顔。
それが私の脳裏に焼き付いて離れなかった・・。
―――謝ろう。
私が真っ先に思った事。
しかし、ハヤテ君は許してくれるのだろうか?
もし、私の事が嫌いになって
そして………
考えがネガティブな方にしか行かない。
自分勝手な理由で怒って、許して欲しいなどとはヤらしい奴だ。
私は今日何度流したかわからない涙を流した――――。