Short 1
□〜夏がくれた贈り物〜
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ミーン。ミーン・・。
あれだけ騒がしく鳴いていた蝉の声がか細く、そして小さく聞こえる。
夏特有の長い昼も短くなってきて、もう空は薄い藍色に染まってきた。
「サキ………
そろそろ閉店だぞ。」
「若、その前に誕生日プレゼントです!」
幼なじみ全員が旅行に行ってて、今年も忘れられてるのかな―、と思っていたから純粋に驚いた。
「今回はタオルです。
ちゃんと使ってくださいよ?」
そうやって差し出されたタオルにはサキの刺繍がしてあった。
「お、おう。
ありがとな、サキ。」
夏休み中に誕生日があるオレはプレゼントがあまり貰えない。
でも、もう慣れてしまった。
「それと………
今年はもう一人いますよ…。。」
「……え?」
オレはサキの目線の先へ体を向ける。
そこには落ち着いた雰囲気をかもし出す和服の少女―――愛歌さんがいた。
「こんばんは。」
いつしか―――
オレの中で伊澄より愛歌さんへの想いが強くなっていて―――、
でもそれはただの片思い・・・
だから、今彼女が来た意味がわからなくて、オレはただ赤くなるだけだった・・・。。