小説

□みどりの日はラムネの日
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(マサラ+ジョウト+ダイヤ)


※グリーンが可哀想。
ラムネ」の関連話。




確か、オーキド博士はマサラタウンにいるはずだったんだけどなあ。
そう広くない、どちらかというと地元と同じくらいの規模の町で途方に暮れる。
こんなことならやっぱり、パールやお嬢様にも来てもらえばよかったなあ。
しょんぼりしてしまってから、しかし、落ち込んでいても仕方ない。
ともかくこうなった経緯を、振り返ってみることにした。





「お届け物〜?」


遡ること数十時間前、ダイヤはパールと共にプラチナの元を訪れていた。
才女である彼女は、旅に出る前もしていたというナナカマド博士の手伝いをしていて、丁度いまは研究が一段落したところだというのでお邪魔していたのだ。


「はい。カントーのオーキド博士に直接、シンオウ図鑑のデータを渡してきてもらえますか?」


「別にいいけど、転送システムを使った方が速くないか?」


「貴重なデータが誤って他の組織に渡ってしまうやもしれません。
私が行くのが一番手っ取り早いのですが、そういうわけにもいかなくて……」


申し訳なさそうに話すプラチナの表情は暗い。
研究は一段落しただけで、終わったわけではないのだ。
分かった、と一度きちんと了承した後に、けど何でだ?と疑問を口にする。
定職に就いているわけでもないので暇だから届け物くらい何でもないのだが、しかし直接、だ。
そんなに危険なものなのかと思うと、体が強張る。


「最近では他地方のポケモンを連れるトレーナーも多くなりました。
それに伴い、ポケモン研究を円滑に進めるにも全国版のポケモン図鑑を所持していた方が都合がいいんです」


「それもそうだな」


そのデータがギンガ団なんかに渡ってしまっていたら、と思うと背筋が凍る。
前にユクシー、アグノム、エムリットを解放するためにポケモン図鑑を手放したことがあったが、その時にも同じような危険があったわけだ。
まだ図鑑が完成していなかったから、よかったものの。


「その大事なもの、いつまでに渡せばいいの〜?」


「できれば、明日までに……すみません、オーキド博士に予定を確認したところ、どうやら明後日からはホウエンで講演会をされるらしいので。
オダマキ博士に渡す分もお願いしたいんです」


「オイラ、ちょっと頭が痛くなってきたな……」


むつかしい話は苦手だ。
頭を抱えるダイヤの隣で、パールが蒼白になっている。
どうかしましたか、体調が悪かったんですか?
慌てて顔を覗き込むプラチナに、パールはそういうのじゃなくて、と歯切れ悪く返した。


「そんな急だと思わなくて……悪い、明日は俺、父ちゃんと母ちゃんと出かける予定が入ってて……」


「あー……そういえばクロツグさんもパールのお母さんも、とっても楽しみにしてたね」


「悪いダイヤ、いや、ダイヤモンド。一人でもできるか?」


ここで断ったら、お嬢様も困るだろうな、と思った。
それに、オイラだって一人でもそれくらいできる。


「任せて!カントーの、オーキド博士に渡せばいいんだよね〜」


ホント、頼んだからなダイヤ!
背中を叩かれて鼓舞される。
お嬢様からデータを受け取って、キッサキのフェリーに急いだ。
その背中に、やっぱ心配だなあ、とパールが呟きながら頭を掻いていたのには、気付かなかったけれど。



本人不在らしい研究所の前で再びどうしたらいいか頭を抱えるも、いい案は思い付かない。
もしかすると、ホウエンに行くらしいしオーキド博士もクチバの港にいたのかもしれない。
だとしたら入れ違いだ、どうしよう。
まだ日は高いが、夜になってもオーキド博士が来なかったらどうしよう。

せっかくお嬢様に頼まれて、パールにも応援されて、ここまで来たのに。
うるうると目に涙の膜が張ってくる。
このままだと泣いちゃう、カッコ悪いな。
ぐず、鼻をすすった所でカサリと葉を踏む音が、背後でした。
慌てて振り向く。


「……どうしたの?もしかして、オーキド博士に用事かしら」


そこにいたのは、水色のノースリーブにミニスカートを身に付けた、茶髪の綺麗な女の人だった。
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