小説
□合い言葉は×××
1ページ/8ページ
嫌い嫌い 大嫌い。
「赤也・・・」
扉越しに彼の声が聞こえるけど、絶対に開けてやらない。
だって俺達、喧嘩の真っ最中。
だから
声がした時、無意識にドアノブに手が伸びたのは、開けさせないためだ。
・・・そうじゃなきゃ、おかしいだろ。
「早く・・・・・」
この手をどけさせてよ
先輩だけの秘密の呪文で。
ー合い言葉は×××ー
才色兼備って、こんな感じだろうか。
スポーツが出来て勉強が出来て、容姿端麗は必須項目。
おまけに、料理まで出来ちゃう。
そんな出来すぎた彼の背中をじっと見つめたながら、赤也はそんなことを考えていた。
先から部屋には、魚の香ばしい匂いと煮物の良い匂いが広がっている。
ふいに、見ていた後ろ姿がこちらへ振り返った。
「赤也、待たせてすまなかったな。」
手にはほど良く湯気の立った料理を持っている。
テーブルに並べられたそれは、料亭さながらの見栄え。
果たして、料亭で煮物が出るのかは定かではないが、それくらいに整った見栄えだ。
そして何より、柳の料理は見た目だけじゃない。
「・・・ん〜〜〜〜っ やっぱ柳さんの美味い!」
煮物を一つ口に運ぶ。
柔らかさもちょうどよくて、味付けも良い。
少し薄味だが、いくらでも食べれそうな感じだ。