小説

□please love me!
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人が人生で最も愛するのは自分と似た人。



好み、嗜好、考え。

それらが自分に似ている人を、自然に傍へ置こうとする。








お前と俺は似ているよ。







初めて見た時、あの危うい姿が放っておけなかった。
 

強さを求めるには

あまりに脆すぎるその心。




いつかの自分を、見ているようで。



保護愛だったかもしれない。


でも、それだけなら

こんな気持ち知ることはなかった。







やっぱり違うんだ。




お前にしかないものが、確かに在る。
そして俺は、それが愛しくて羨ましい。







だから俺は、掛け替えのないお前を愛してる。


今日も明日も明後日も・・・













ーplease love me!ー















狭い空間に立ち上る白い湯気が眼を覆う。

窓から入る光は、外がまだ明るいことを示していた。



「部長って着痩せするんスね。」


自分の前に座る幸村に話しかける。

意外にも大きな背中に泡を広げながら、赤也はじっと後ろ姿を見つめていた。



線が細いと思っていた幸村の体は、均整のとれた綺麗なもので
自分よりも遥かに、鍛えられた証拠がわかる。




「そんなに痩せて見られてたんだなぁ。」


前から困ったような笑いが漏れた。

青み掛かった綺麗な髪が濡れて、赤也の広げた泡を少し落としていく。


背中を白い泡が覆い尽くした頃、幸村が後ろへ振り返った。


「はい交代。次は赤也の背中流してあげる。」



手を出して、赤也の握っていたスポンジを受け取る。
一緒にいるときに見せるこの笑顔が赤也は好きだった。


こうして風呂で背中を流すのだって、始めは恥ずかしくて断っていた。

だが、さすがに何度も断るのは気が引ける。
今日だけ…と思っていたが、

こんなに嬉しそうに笑う恋人を見たら
次から断れないと思う。



自分の前に手招きする幸村に従って、ペタペタと場所を移動する。


前に座ると後ろには幸村がいて。

湯気の温かさと幸村の笑顔に、赤也もすっかり顔が緩んでしまう。



前に座り込むと、白い小さな背中を幸村に預けた。


赤也の体は、黒い髪がよく映える色をしていると思う。
本人が嫌いだと言う癖っ毛も、よく似合っているし色っぽく見える。

無防備に自分に体を預ける赤也に、幸村の中で悪戯心が芽生えていく。



端正な顔に一瞬滲ませた笑みが、前の赤也に見えることはなかった。
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