小説

□トラワレノキミ
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紅い紅いアナタの髪が

私の体を滑る







『・・・好きだ。』




そうして

見上げたアナタの瞳に捕らわれたなら






それはきっと至福の時間・・











ートラワレノキミー











『もう終わりだな、俺達。』




苦々しげに言い放たれた言葉。
きっともう、会うことはないと突きつけられた。



『何で・・・っだってまだ始まったばかりじゃ!!』


溢れる涙を堪えながら、去っていく後ろ姿に訴えかける。


だが、それっきり。

相手は振り返ってくれることもなく

街灯が灯る街とは反対の夜闇に、愛しい思い人は消えてしまった・・・











「〜〜〜っ!!」





「・・・・・オイ。」



大きなスクリーンに映し出されたカップルの別れの場面。

映画という架空の世界を忘れ、すっかり感情移入してしまった奴が若干一名いた。




「赤也・・・鼻水垂れてんぞ。」


呆れたようにブン太がため息をつく。
傍らに座る赤也の鼻に、ハンカチを押し付けた。


最近流行りの恋愛映画。

たまには映画もいいと、その時のノリで見に行くことになった。

映画館デートがまったく似合わない互いの姿を想像して、笑い転げていたのだが・・・




「・・・ヒド過ぎるッスよ!あの彼氏っ!!」



まさか、こんなに入り込んでしまうとは。



ずずっと鼻をすする赤也を横目で見る。

真っ赤になって泣く姿は正直言って、来て良かったと思うくらい可愛い。

自分だけ置いてけぼりを食らった気分だが、まあ良しとしよう。
腕に抱えたポップコーンを一掴みすると、ブン太はスクリーンに視線を戻した。
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