小説
□心触れるように
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そっとその唇にキスをしよう
綺麗な髪に指を絡ませて
それから その耳元で愛を囁こう
小さな体を腕に抱いて
そうしてやっと
この指が掠める
ー 心触れるように ー
男は女を愛し、女は男を愛す。
それは種の維持のため、細胞レベルで受け継がれる本能的な愛。
それゆえに、常。
だがまれに異常な場合もある。
つまり、常ではない愛。
同性を愛すること。
俺は別に、同性愛者でも女性恐怖症でもない。
だが、好きになった。
それはいつしか
好きでは収まらなくなって・・
「赤也・・・。」
気付けば、抱きしめていた。
後輩と先輩という立場上あり得ないこともない行為。
それでも、この空間を流れる緊張感は有り得ない。
「柳・・先輩?どしたんスか・・」
心なしか赤也の体も熱い。
そう感じるのは、俺の自惚れなのか。
初めて見た時から何か引っかかりを感じていた。
三強に対して食ってかかる生意気な部員。
そう言われていた赤也。
特別、気になどならなかった。
そんな輩は何もこいつだけではない。と。
「柳先輩・・?」
いつからだろうか。
この声が名を呼ぶ度に
切なさに似た想いを抱いたのは。