小説

□求めて。欲しいから。
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「ふわぁあ〜・・・っ」



屋上に響く少し高めの声
それは、仁王がよく知る声だった。


「赤也・・・?」




壁から顔を覗かせれば、フェンスに凭れた後ろ姿が見えた。
癖の強い髪が風に揺らされて、ユラユラ揺れるワカメのよう。

そんな姿も、ひどく可愛いと思ってしまう。


「・・・・・。」



声を掛けようかと思ったが、赤也の後ろ姿をしばらく見つめることにした。




しかし、赤也はこんなとこで何をしているのだろうか?


普段からサボり癖のついた自分とは違い、赤也は割と真面目に授業も受けている。

もしかして、自分に会いに来てくれたのか。



確信のない期待が募る。
これが、惚れた弱み。






ふと屋上に誰かが昇ってくる音がする

それに気付いた赤也が、扉の方へと振り返った。

「よぅ赤也!」




二人目の声

これも、仁王がよく知るものだった。




「あーブン太先輩もサボりッスか?」


悪戯っぽく笑う赤也の隣に、ブン太が歩み寄る。赤い髪が日に当たり眩しい。




「お前がここに来んのが見えたから。」



いつものようにサラッととした口調で言うブン太に、赤也は「何スか?それ」と可笑しそうに笑った。

だが、仁王にはわかる。

ブン太の言葉の響きに、僅かに滲む真意が。


赤也の隣で笑うその顔は
まるで愛しい人を見るかのよう。




「・・・・・っ。」


妙な感覚だ。

ただのクラスメートとただの後輩が話してるだけだというのに

息が苦しい。




「先輩、相変わらずそのガム食ってるんスか?」


「おぅ赤也も食ってみるか?」



何気ないやり取りをしている二人を呆然と見つめる。

だが、次の瞬間


仁王は自分の眼を疑うことになる。
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